書書鹿鹿 ~かくかくしかじか~

"かくかくしかじか"と読みます。見たもの、聞いたもの、感じたことを書いてます。

勝手にシンドバッドおばさん

この前の話。

その日もいつもと同様、昼過ぎにバイトをあがった。午前の早いうちから、荷下ろしでスイカの重さに腰をやられながらなんとか仕事を終える。社員の歯の抜けたおじさんに「スイカ重いだろ?」と聞かれて、「いや、もう重たいっすね」と言ったら、「でも、3Lだろ?4Lはもっと重いぞ」と未知の4Lサイズが来る恐怖だけ植え付けられた。そんなこと言わないでよ。怖いじゃん。

腕力0になった状態で店を出ようとしたが、その日は両親が出かけており昼も夜も自前で食べるものを用意しろとお達しが出ていたことを思い出し、バイト先で食料を買い込むことに。

ただ、ちょうど職場の昼休憩と時間帯が重なっていたため、同じく昼ごはんを買っている仕事仲間に見つからないようにこっそりとカゴに商品を詰めていく。前にもバイト終わりに食材を買っていたところ、歴の長いパートのおばちゃんに刺身を買っているところを目撃され、1か月以上経った今でも「刺身買ってたでしょ?」としつこく聞いてこられることとなった。いいだろ、刺身買っても。
なんなら、そのおばちゃんが別の仕事仲間にも話しており、「刺身買ってたんですか?」と聞かれたこともある。なんでみんな疑問形なんだよ。

ほりい「俺な、バイト終わりお刺身買うねん」
仕事仲間「なんでやねん!お前、刺身買わん顔やろ」
ほりい「刺身買わん顔ってなんやねん!」


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ももの漫才みたいに、印象だけでとんでもない偏見を持たれている可能性がある。

 

ということもあり、メタルギアソリッドのスネークの要領で見つからないようにミッション(商品をカゴにいれる)を遂行していく。野菜、豆腐、こんにゃく、お酒と必要なものを入れていき、後は鮮魚コーナーに行くだけだった。そう、お刺身を買うのだ。あれだけお刺身クエスチョンをされつつも、やはりちょっと贅沢したい時はお刺身が食べたくなるのだ。その日はツバスが安かったので、朝の段階から目星をつけていた。しかし、その一角に見慣れた服の男がいる。

店長である。

おそらく休憩時間用の昼ごはんを買いに来たのだろう。鮮魚コーナーにはお刺身の他にお寿司も売られており、お惣菜コーナーも隣接しているため大体の人がここに買いに来る。

それにしても、店長は鮮魚コーナーのお刺身売り場(切り身ではなくさく売り)の前でじっとして動こうとしないのだ。仕方なく他の売り場をぐるっと回ってもう一度鮮魚コーナーを見てみる。

いる。

店長がまだいるのだ。特に何かを買う素振りもなく、じっとお刺身を見ている。結局、5分ぐらいお刺身を見てから作業場へと戻っていった。お刺身を鑑賞用として見るやついないって。水族館じゃねぇぞ。

店長がどこかへ行き、無事ツバス(2さく)も購入することができた。(結局家に帰ってから昼用と夜用で1さくずつ、主菜のポジションを任せることに成功した。)

だがしかし、レジを通してから大きな問題が発覚した。

エコバッグが無い!

1週間ほど前にずっと使っていたエコバッグ(セレッソ大阪の真っピンクのやつ)を無くしていることを失念していたのだ。

  • 板こんにゃく2枚
  • 木綿豆腐3パック
  • ひらたけ1パック
  • 上新粉250g
  • 山芋200g
  • お酒350ml2缶
  • ツバス2さく

これをどうにかエコバッグなしで家に持って帰らなければならなくなった。今更レジ袋を追加購入するのは、ドケチ根性が許してくれなかったので断念。仕方なく制服やタオルが入ったバイト用のカバンをひっくり返し詰めていくことに。テトリスの要領で綺麗に詰めようとしたのだが、ひらたけの台形パックと山芋の中途半端な盛り上がりに翻弄され、上手く組むことが出来ず。ツバスが飛び出た上から制服やタオルを無理やり乗せる【ゲームオーバー状態】のまま帰ることにした。

 

外は夏もどきの気候で日が照っており、日傘をさしながらかえることに。【脇からツバス生え日傘男】のコスプレをしながら約20分かけて家まで歩いて帰る。イヤホンでJanne Da Arcを聴きながら。(『シルビア』最高!)

途中、高速道路の高架下を通る場所があるのだが、その手前で前から歩いてきたおばさんになにやら話しかけられいることに気づく。イヤホンを取って聞いてみる。

「頑張ってね!!」

激励だった。まさか行きずりのおばさんに激励されるとは思っても見なかった。それも中々の声量で。おそらく昔のどっきり番組で大活躍した『コラおじさん』の奥さんだろう。

『頑張ってねおばさん』

どちらも急に言われるとビックリするが、こちらのほうがはるかに健康的である。

ただ、どれのことを言っているのか分からない。

「(気温が暑くなってきたけど、夏に負けないように)頑張ってね」

なのか

「(脇からツバス生えてきてるけど、私もその経験あるから)頑張ってね」

なのか

「(こいつも私を倒せる器ではなかったか。他の魔物に殺されないようせいぜい)頑張ってね」

なのか、見当もつかない。

そうこう考えてるうちに、頑張ってねおばさんが尋ねてきた。

「今、何時?」

「はい?」

「今、何時?」

『勝手にシンドバッド』じゃん


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サザンオールスターズの名曲を急に歌い出したのだ。

「今、何時?」と来れば、答えはただひとつ。

「そうね、大体ね~」

相場は決まっているのである。『頑張ってねおばさん』あらため『シンドバッドおばさん』になったのだ。シンドバッドおばさんから絶好のパスが来た。しかし、無駄に社交性を持っているとそのフリを台無しにしてしまう。

「えっとですね~、(バイトが終わったのが13時で買い物とかしてたから)13時30分」

なんともったいない。そうしてグダグダ答えていると食い気味で

「やっぱいいです」

とどこかへ消えてしまった。

人に時間を聞いておいて、どっかへ行く。

まさしく『勝手にシンドバッドおばさん』であった。

ラーラーラーララララーラーラー

 

勝手にシンドバッド

勝手にシンドバッド

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