今日はゼミの合評があった。
文章系の学科のゼミなので、もちろん文章を提出し教授と生徒が意見を出し合い合評する。自分が所属するゼミでは、毎週1人が文章作品を提出し、1コマ90分かけて全員が順番に読んだ感想や意見を言い合う。文章作品は文章であれば何でもよく、基本的には小説家志望の生徒が多いので、短編小説や長編小説の触りが多いのだが、自分はお笑いが好きなこともありコントを提出している。他にもエッセイや戯曲、詩集に落語なんかでもいい。とにかく文章作品ならなんでもウェルカムという緩いゼミである。
今週の担当はHさん。Hさんは普段から物腰柔らかながらも、ズバズバと忌憚なき意見を言う印象があった。
昨年もゼミが同じ(基本的に持ち上がり)だったので、Hさんの作品は3個読んでいたのだが、描写の表現が上手く、設定はネガティブなものが多めなのだが、読後感がさっぱりしている。そんな作風である。
今回Hさんが提出したのは、昨年度の最後に出していた短編小説をベースに長編小説に仕上げたものだった。もちろん1コマで原稿用紙100枚近い作品は合評できないので、冒頭の原稿用紙20枚程度の部分での合評となった。
授業が始まり、いつものように教授からいくつか指摘や質問が飛ぶ。(これは昨年度からずっとなのだが、教授が最初に言うと後の生徒言うことなくなるからしんどい。「みんなの分残しといてよ~」といつも思っている。)
教授「じゃあ、いつものように私から。これは昨年度提出した作品を長編小説に直したもの?」
Hさん「そうですね」
教授「そうか。う~ん」
ここで少し曇行きが怪しくなった。
教授「これを長編小説に直すにはいろいろと足りないかもなぁ」
たしかにその通りだった。自分もHさんの作品を読んだのだが、描写表現はいつもと同じく綺麗なのだが、肝心の設定や登場人物の少なさに少し粗があった。短編小説として読んだときは短くまとまって読みやすかったのだが、長編小説に直すと後半への展開にむけた要素が少ないのだ。
Hさん「あぁ。はい。」
自分が書いた作品に否定的な評価を受けると、人は2タイプに分かれる。
1つは”素直に受け入れて吸収するタイプ”
他者からの客観的な意見を気づきとして取り入れて、次に生かすタイプである。
もう1つは”プライドが高く反発するタイプ”
他者からの意見には納得しているが、自分のやりたいことや譲れないものがあるので、聞いてる風を装って聞き流して、取り入れないタイプ。
Hさんは明らかに後者のタイプだった。
教授の意見に対し、食い気味で「はいはい」「そうですよね」と相づちを入れていく。教授の意見が終わるや否や、すぐに「ここはこうしようと思っている」「そこにはこういう意図がある」と反論を繰り返す。
その攻防がしばらく続いていると、とうとう相づちが相手の話を追い越していった。
教授「例えば、ここのキャラクターの部分が...」
Hさん「そうですよね、このキャラクターは自分の中で...」
相づちが本文を食べ始めたのだ。相づちの捕食シーンである。
もう輪唱かと思うぐらい2人が同時に喋っていて、誰も聞き取れていない。なんなら、途中から教授が話を遮られて黙る現象も起こった。
結局、Hさんは他の生徒からの意見に対してもバクバクと相づちで租借し続け、授業が終わるまで食べ続けていた。
相づち界のギャル曽根。
完食。