(*2021年2月に書いた記事)
自分は自他共に認める「ど」が付くほどのケチである。
昔からお金に対する執着が凄く、なるべくお金を使わないように生きてきた。
中学2年の冬、サッカーの試合で遠征に出かけた時、他の部員は帰り道に駅の売店で買い食いをする中、どうしてもお金を払いたくなかった自分はグッと我慢し、極度の空腹と寒さのストレスで家の玄関を開けるや否や泣いてしまったことがある。
その我慢ができるほどのどケチなのだ。
ただ、自分のどケチはお金を使わないだけではない。
定価より安ければ買うというルールがある。
主にそのルールが適用されるのはスーパーマーケットだ。
スーパーでは午後20時以降の時間帯になると割引シールが貼られていく(店舗によって違う)。
この割引シールが貼られた商品を買うと、「自分は定価より安く買った」という満足感に体中が満たされるのだ。
もはや「お刺身やお惣菜を買っている」というよりかは「割引シールを買っている」感覚に近い。
一般的には午前中、お昼に買い物を済ませる人が多いので午後20時以降からスーパーに行く人は少ないが、自分は何か外出する用事があればわざわざ割引シールが貼られる時間帯を狙って行動スケジュールを変更することもある。
もはや”どケチ Lv.100”の自分は、曜日や季節によってどの商品が割引されているかを予測することができる。
まさか自分でもスーパーでのお買い物にPDCAサイクルを適用するとは思ってもいなかった。
そして、最近もその予想が的中した。節分である。
節分と言えば一番に恵方巻きがピンと来るが近年恵方巻きの作りすぎが食品ロスに繋がっていると批判を受けているため、割引されにくい。となると割引されているのはもう一つのアレ。そう福豆だ。
「鬼は外、福は内」の掛け声でお馴染みの福豆は、節分に自分の歳の数(もしくは1つ多く)の豆を食べると邪気が払われると言い伝えられている。
節分当日に親が鬼のお面を被り子どもが豆を投げる、というのが全国の家庭で行われている正しい福豆の使い方だ。
しかし、自分は福豆を『邪気払い』ではなく『貴重な植物性たんぱく質』と捉えている。
ここ最近、ダイエットを兼ねた筋トレを定期的にしているのでたんぱく質が豊富でおやつ感覚で食べられる大豆を重宝している。
福豆は定価で買えば1袋100~150円なのだが、節分を過ぎれば福豆としての役目は終えているため安くなる。
そう睨んだ自分は節分の翌日にスーパーを巡った。ちなみに伝え忘れていたが、自分は値引き品を探すためであれば、スーパーを平気で3~4店舗も回る男である。こんにちは。
2月3日、1店舗目のスーパーに到着。
早速、店内を見て回る。しかし、店中探しても福豆の文字は一つもない。
それどころか、もうすでにひな祭りの準備が完了しており、昨晩まで福豆があったであろう売り場には雛あられでデビュー戦を飾っていた。1店舗目は残念ながら撃沈した。
続いて2店舗目は少し離れたところにある1店舗目と同じスーパーへ。
またしても店中探しても見つからず。諦めて帰ろうとしたところ、レジ横に「売り切り」の文字を発見。予想通り福豆が定価の半額の50円で売られていた。
半額という期待以上の成果に大喜びした自分は5袋を掴みそのままレジを通した。
店員さんが福豆を5袋だけ買う成人男性を見て少し驚いてたので、おそらく「今年の節分は2月2日だったに勘違いしているのでは?」と思っていたに違いない。
その期待を裏切ってしまっていることに謎の罪悪感を感じながらも店を出た。
冷静に物事を見極めれる人であれば、「5袋も購入したのだから、ここでこの文章は終わりだろう」と思うだろうが、まだ終わらない。
これ以上の割引を求めるあくなき探求心が物語を続けさせるのだ。
というわけで、カバンに福豆300gを詰め込んだ男が3店舗目に向かう。
道中、たまたま大学の後輩に会い「福豆を半額で5袋も買った」と自慢げに話したら、すごい深刻な表情で「大丈夫ですか?」と心配されてしまった。
ごめん後輩、もう大丈夫ではないのだ。
「今から家に帰る」とウソをつき向かった3店舗目では1店舗目同様、お内裏様とお雛様によるクーデターが起きており、鬼はあえなく退散してしまっていた。
そして、その日最後の4店舗目に望みをかける。
初めて行くスーパーだったが、入り口の自動ドアが開くや否や『福豆 売りつくし!!』と心強い文字を発見した。
そのスーパーでは節分当日にどのような売り方をしたのか分からなかったが、4種類のメーカーの福豆が山のように在庫を抱えていた。
仕入れ担当の無能さがうかがえるが、どケチショッピングにおいては重要な戦力である。
150円の福豆が半額以下の6o円で販売されており、2袋を購入。
4店舗合わせて、7袋も福豆を購入し家に帰った。
家に帰り、さっそくボリボリと福豆を食べる。
とっくに鬼は2月2日23時59分の定時に帰宅しているので豆を投げる必要がない。
味を変えるために砂糖を絡めたり、グラノーラに混ぜて食べたりいろいろと試した。
するとお腹の様子がおかしくなってきた。
どうやら、福を内に入れすぎたらしい。
急いでトイレへ駆け込む。割引の鬼の目にも涙であった。