値引きシールには昔から目がない。
高校生の頃、金銭的にも時間的にも余裕ができるようになったので、夜な夜な近所のスーパーを巡り安くなったお刺身やお惣菜を買うことに没頭していた。
あれから数年経った今でも
割引シールが張られた商品を見ると心が躍ってしまい、ついつい買ってしまう。定価で買うことが珍しいぐらいである。(スーパーで働いている人間がそんなことでいいのか)
大学の1限終わり、歩いて3分ほどのところにあるスーパーへ昼食を買いに行った。ほとんどの人は大学内にある購買や食堂、カフェで昼食をとるのだが、スーパーの方が圧倒的に品ぞろえが多く安いため、自分はスーパーを利用している。
基本的なお目当ては、いつものように鮮魚コーナーとお惣菜コーナーなのだが、掘り出し物に出会うかもしれないという期待感もあるため一応野菜コーナーから1周することにしている。
もちろん午前11時なのでどの商品も割引されておらず、「おにぎりを買ってかえるか」と思っていると、一つの商品が目に入った。それは鮮魚コーナーから少し行ったところの、しらすやら明太子やら多少の加工が施されたコーナーにあった。
これである。
まず思った。
「これはなんだ?」
左下の部分を見ると、おそらくウナギやアナゴの類だろうと分かったのだが、パッケージ、フォルム、値段、値引きシールのどれをとっても怪しすぎる。
そしてもう一つ。
「鮮魚ではないだろ」
誰が切断された魚の頭を見て「あ、鮮魚だ」と思うのだろう。”鮮”の要素が無さすぎる。新鮮さのかけらもない。かなりタレ的なもので加工されているのに何が鮮魚だよ。
ただ結果的に言うと買った。
理由はアナゴが大好きなのと、割引シール、そして興味本位だった。もはやこれに食べれる部分、つまり可食部はどれほどあるのだろうか。それが気になったのだ。
この自称:鮮魚お買い得を含め何点か商品を買い込み、サークルの部室に戻る。どうせなら他の部員が集まっている時間に食べて、一緒に確認して見たかったので昼休みまで待つことにした。
昼休みになり、続々と授業終わりの部員が部室に集まってくる。10名ほど部室に集まった段階でカバンに忍ばせていた自称:鮮魚お買い得を取り出し、電子レンジで温める。部員に見せたかったと言っても、これをむやみやたらに「どうだ」と披露したら、いかれた商品を購入したと発覚して、自分の株が暴落するのは目に見えていたので、お気に入りの後輩だけに見せてみた。
案の定、後輩から「何買ってるんですか!?」と至極真っ当なリアクションをいただき、「俺も知りたいから買った」と後輩からすれば訳の分からない返事を返す。
いざ、実食!!(とんねるずのみなさんのおかげでした風)
ところどころにアナゴの身だけがボロボロと崩れている部分があったので、そこから攻めていく。美味しい。この自称:鮮魚お買い得の正体はシンプルにアナゴのかば焼きの残骸だったので、味や食感は申し分ない。しかし、食べ進めていくと大きな壁にぶち当たっていく。頭だ。もはや、たまに鮮魚コーナーにも売られている魚のあらの内容なので、頭付近の身を食べようとすると骨が邪魔で全く食べれない。アナゴの骨と言えば小骨のイメージだったので、武骨な骨(骨の形容詞に骨を使って申し訳ない)にびっくりした。結局、可食部は全体の2割ほどだった。
自称:鮮魚お買い得は「鮮魚」でもなく、「お買い得」でもなかったのだ。
値引きシールには時たま、こうした詐欺に出会うことがある。どうせ自分は、また懲りずにこの詐欺に引っ掛かるのである。