書書鹿鹿 ~かくかくしかじか~

"かくかくしかじか"と読みます。見たもの、聞いたもの、感じたことを書いてます。

ご飯の話をしてたら、MONO NO AWARE『味見』が聴きたくなった

恋人とご飯の話で盛り上がった。

きっかけは恋人が何となく「好きな食べ物って何ですか?」と聞いてきたことだった。付き合う前に聞いとくべき質問ランキング堂々の第一位の質問に、若干戸惑いながらも「焼き鳥」と答えた。

高校時代に焼き鳥屋でアルバイトをしてからずっと、好きな食べ物は「焼き鳥」にしている。あの時に毎回食べていたまかないの味は、5、6年経った今でもぼんやりと定着している。

その答えを聞いて「部位はどこですか?」と聞いてきた。「せせり(首)と背肝(腎臓)」
そこからしばらくは昔バイト先で食べたせせりの美味しさの話や、近所の焼き鳥屋で初めて背肝を食べた話で花を咲かせた。

そして返す刀で付き合う前に聞いとくべき質問ランキング堂々の第一位の質問を聞いた。すると恋人は「すいません、シチュー」と答えた。

どこに対する謝罪なのか。はたまた、チーム戦のクイズ番組で簡単な問題を取ってしまう時に必ず現れる定型文の「すいません」なのかは分からなかったが、宮崎美子ばりの「すいません」の後のシチューという回答が意外だったのは確かだ。

恋人は定期的にカレーを食べに行くので、てっきりカレーが1位なのかと思っていたが、「あれはカレーではなくナンを食べに行っている」というカミングアウトによってカレーの序列が下なことがわかった。

シチュー>ハヤシライス>カレー

の順らしい。

ここで原監督ばりのグータッチを交わす。

 

 

 

シチューは抜きにして、カレーよりハヤシライスが上位なのは自分も一緒だったからだ。

自分は「カレーよりもマイルドで辛味も少なく米に合うから」、恋人は「ハヤシライスは牛肉だから」と理由は全く違ったが、そんなことはどうでもいいくらいどうでもいい感覚が一緒だったことに嬉しさを覚えた。

それから、親の手料理で何が1番好きかという話になり、ベタに「ハンバーグがいい」となった。他にないか聞いたら「料理名は分からないけど、鶏肉と大根を炊いたやつが好きです」と言った。また一緒だった。2日前にちょうど家で手羽元と大根の炊いたやつが出てきて美味しいと感じたばかりだった。

2打席連続ホームラン(2度目のグータッチ)

まさにおかわりくんである。

 

まさにの意味は分からないだろうが、とにかくご飯の話で盛り上がった。これまでデートで行ったご飯屋の話やこれから先食べたいご飯の話。互いの空腹状態を刺激しながら、その日はお会計となった。(帰宅した)

 

 

 

 

これまで「美味しい」という感情に特別こだわることはなかった。「美味しい」と思う時は「美味しい」と思うが、別に口には出さない。食べれてラッキーぐらいの感覚である。

しかし、ここ最近「美味しい」が特別な感情になっていることに気がついた。昔から食物アレルギーを持っており、食べられるものが制限されていたのだが、ある程度自分のボーダーを測りながら新たな食に触れることが多くなった。

クレープ、トンカツ、お蕎麦、天ぷら、パスタ…

20歳をこえてから、初めて外のお店で食べたものだ。20年間も食べられなかった勿体なさもあるが、それ以上にちゃんと感覚や思考が発達した状態で新たな「美味しい」に出会えることが嬉しくてしょうがなかった。

それに恋人が出来てからは、なるべく「美味しい」と口に出すようになった。感情を共有したいと思ったからである。誰かと食べると美味しく感じるのではなく、美味しく感じているのを誰かに伝えているだけなのだ。

それに今日話している時に、「美味しい」で満たされるのは食べてる時だけじゃないんだと思った。

「美味しい」の幸福は過去であれば経験で感じれるし、現在であれば味覚が感じれるし、未来であれば想像力で感じられる。どうりで話が盛り上がるわけだ。

 

 

 

 

帰りの電車ではずっと、MONO NO AWARE『味見』を聴いていた。


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韻を踏み倒したMONO NO AWAREらしい言葉遊びが散りばめられながらも、「料理」と「人生」の難しさをうまく言い表した歌詞表現も深く刺さる。

美味しいものを食べてみない
あったかいものを食べてみない
美味しいものを食べてみない
あったかいものを食べようよ
肩落とす前に頬っぺたを
MONO NO AWARE『味見』より

美味しいもの、あったかいものという幸福度の高いものを「食べてみない」「食べようよ」と誘っている。ざっくりと解釈すれば「幸せになろうよ」と聞こえるし、もっと言えば美味しいものはそれぞれの好みによって違ってくるので「2人の幸せの形を探そうよ」とも聞こえてくる。前から歌詞のこの部分がとても好きなのだが、ご飯の話で盛り上がったことがきっかけで、一段階自分の中での聴こえ方捉え方が深くなったような気がする。

耳で楽しんで、意味も楽しむ。

甘味も辛味も苦味も酸味も、ご飯の話はいつだって盛り上がる。

味見

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  • MONO NO AWARE
  • インディー・ロック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes
味見

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