書書鹿鹿 ~かくかくしかじか~

"かくかくしかじか"と読みます。見たもの、聞いたもの、感じたことを書いてます。

失望保険

今日も今日とてバイト。

昨日の書き出しもこんな感じだったが、正直なところバイトでしか外に出ないので、バイトでの話ばかりになってしまう。

kakusika.com

今日はまだ正月を引きずっているのか、従業員が土曜日にしては少な目だった。もちろんお客さんも年末・大晦日に比べたら屁みたいなもんだったが、店長は仕入れが上手くいかなかったり売り場を勝手に拡大させられたりと振り回されていた。対応に追われすぎて開店から1時間経ったのにもかかわらず、店長は焼き芋しか焼いていなかった。

 

 

 

そんなバタバタの中、自分はひたすらきゅうりを詰めていた。昨日の人参はいちいち重さを測らなければいけなかったし、袋にも詰めづらかったのでイライラしたが、きゅうりは本数が決まってたし、何より細長くて入れやすい。きゅうり、だーいすき(ハズキルーペの菊川怜みたいに)

午前中かけて20ケースを完成させ13時半ごろ、いつもより30分遅れで休憩に入った。

タイムカードを押し1時間の休憩に入ると、自分は決まって奥まった席(ビールケースにクッションを敷いたもの)に座り、朝通勤途中にあるコンビニで買ったおにぎり2個を食べながら本を読む。これがルーティンだった。

今日もそれを実行しようと奥の席に座り、おにぎりを食べながら読みかけだった西加奈子『あおい』を読み始める。店長が遅れて作業場に戻ってきて休憩を始めるようだった。

自分が座る作業場の奥にはパソコンや書類があり、売り場に出すポップを作成したり、店

長が書類をまとめたりする場所だった。

すたすたと歩いてきて別のアルバイトと談笑をし、ひとしきり話し終えた後、去り際に自分が机に置いていたもう一つのおにぎりをポケットに入れて出て行こうとしたのだ。

「いやいやいや…」

すかさず自分は店長に言う。

 

 

 

もちろんこれがボケ(冗談と言う方が正しい)だとは分かってる。

自分のバイト先の社員3人は一概に冗談が好きだった。特に店長は率先して冗談を言いたがる。昨日も別のアルバイトが加工していたかぼちゃに虫食いのあとがあると、「虫が出てくるかもしれないから、そういうときはほりい君に投げると喜ぶよ」と店長は冗談を言った。ありえないことを言ったり、勝手な人物像を作り上げる手法の冗談がめちゃくちゃ多い。

 

そういう時のリアクションは先人にならうのが一番だと知っている。

 

「何でなんすか!!」

「ちょっと待ってくださいよ!!」

「いやいやいや」

「違いますよ!」

 

パンサー尾形さんの顔が真っ先に浮かんできた。

そう、“少し怒りながら否定する“

これに限るのだ。

 

 

 

「いやいやいや…」

いつも通り、過去問の答えをそのまま引用しツッコむ。

基本的にはこれで丸く収まる。

しかし、もうこれでは正直通用しなくなっている。というか、飽きている。

これまで働き始めてから1年間の間、ありとあらゆる冗談を既存のパターンで返していたが、自分もそのリアクションを使いまわすことに嫌気がさしていたし、店長もどこか満足しないない表情をしていた。

何でアルバイトの自分がそこまで店長の冗談に気を遣わなければいけないのかよく分からない。手当出してくれ。冗談手当。

意を決してツッコミにひと手間加えてみた。

「いやいやいや…、強盗じゃないですか!」

言った後すぐ、違うなと分かった。それは店長の「金品盗んだなら強盗やけど…」という何とも言えないリアクションからも分かったし、何よりも自分で違うと分かりながらタイミングを逃すまいとして言ってしまっていた。

「強盗」にしたのは、あからさまに自分が見ている状況で犯行していることに対して、「泥棒」だと弱いかな、と思ったからだ。ワンランク上の犯罪者に仕立て上げた。

今になれば「泥棒」でも十分だと思う。

けど、自分の中ですぐに正解が出た。

 

「いやいやいや…、現行犯ですよ!」

 

これだなぁ~。

絶対にこれ。

窃盗・泥棒・ひったくり・強盗と奪取のランクでとやかく言うのではなく、今まさに現場を抑えた意味で「現行犯」を持ってくるのが正解だった。

何で店長の冗談に気を遣った上で、自分がへこまないといけないのだ。

よくわからない。

手当出してくれ。

自分に対する失望保険も適用されるだろう。