書書鹿鹿 ~かくかくしかじか~

"かくかくしかじか"と読みます。見たもの、聞いたもの、感じたことを書いてます。

『THE FIRST SLAM DUNK』を観に行ったらスクリーンアウトされた話

『THE FIRST SLAM DUNK』をようやく観に行った。

漫画『SLAM DUNK』が家に全巻揃っている自分としては、もちろん公開日である2022年12月3日に観に行きたかった。映画を楽しむため、久しぶりに全巻読み返しておさらいもしていた。しかし、卒業に必要な課題の提出と被ったり、年末年始で人が多くなる期間と被ったりでなかなか観に行けなかったのだ。

『THE FIRST SLAM DUNK』は予告でもあまり前情報がなかったし、観た人が口をそろえて「前情報は入れすぎない方がいい」と言っていたのでなるべく情報は調べずにいたのだが、それでも人気作なので情報統制するのが大変だった。

中でも一番大変だったのは『ハライチのターン』だ。元々バスケットボールが大好きな澤部さんは公開されるや否や映画を観に行き、それをエピソードトークで話していたし、次の週では岩井さんまでもがエピソードトークで映画を観に行った話をしていた。お二人ともネタバレに最大限注意していたが、少しも前情報は入れたくなかったので2週連続で途中で聴くのを辞めざるを得なかった。これも全て前情報なしで観るため。

 

 

 

映画を観る前日、大学で予定があったので大学付近に下宿している後輩の家に泊まることにした。自分の家から最寄りの映画館に行くには県境を跨がないといけないし、何より大学付近にアレルギーでも食べられるラーメン屋があるという情報を仕入れていたので後輩に厄介をかけることにしたのだ。

(余談だが、結局そのラーメン屋は臨時休業しており、めちゃくちゃチェーン店でご飯を食べることになってしまった。わざわざ20分ほど歩いてラーメン屋に向かったのに閉まっていたため、後輩からの好感度が下がる)

当日になり後輩は大学の授業があったので仲良く『ラヴィット』を見てから家を出た。後輩が「この後どうするんですか?」と聞いてきたので「ようやく『THE FIRST SLAM DUNK』を観に行く」と答えたら、「あぁ、僕見ましたよ」と返ってきた。

「まずい!!」と思ったが時すでに遅し。

 

「○○(ネタバレ)、凄かったですよ」

 

敵は身近に潜伏していた。

事前知識0の脳内に情報が入ってきてしまった。せっかく全消ししたぷよぷよの盤面に「やったな~!」が来て、爆弾が下に溜まってしまった状態だ。こっちは何もやってないのに。濡れ衣だ。あんまりだ。

ただ、そのネタバレはなんとなく予想していたことだったし、内容については一切触れていなかったのであまりダメージではなかった。

ちなみにその後輩は原作を全く知らないにも関わらず映画を観に行ったらしい。

「予定まで時間が余ってたので」

そういう映画じゃないぞ。

 

 

 

映画を観た感想を先に言っておく。(ネタバレなし)

最初のシーンから号泣だった。そもそもこの映画を観るにあたり漫画を読み返していた時からずっと泣きっぱなしだったので、もうどうしようも無かった。

原作者の井上雄彦先生が脚本・監督を務めているので、原作ありき映画特有の逸脱しすぎたオリジナル性がなく、『SLAM DUNK』ファン誰もが納得する描き方で、シーンの取捨選択が抜群。(原作を知らない後輩は「よくわかりませんでした」と言っていたが、そりゃそうだ。)

あっという間に2時間が過ぎていた。

10-FEETの最高のEDが終わり、場内が明るくなると気づく。着けていたマスクが涙と鼻水でぐちょぐちょになっていた。

それぐらい最高の映画体験だった。

(安西先生のタプタプステッカーも貰えたし。)

 

ただ、この映画を観る前にちょっと不思議な体験をしたのでそれを書いておきたい。

 

 

 

話は遡って昼前。目的地だった映画館に着く。TOHOシネマズが入った商業施設で、何度か来たこともあったが映画を観るのは初めてだった。前日に座席の情報を調べようとホームページを見ていたら、“通常上映”の他に“轟音上映”というものがあった。

 

「音の体感・迫力あるサウンド」を意識したシアターです。スピーカーユニットを向かい合わせで駆動させることで通常の1.5倍~2倍のパワーを発揮するアイソバリック方式を採用したサブウーハーを導入します。TOHOシネマズ以外では体験できない、空気を震わせる体感型サウンド・シアターを実現します。

 

全く何を言っているか分からないが、要は「大音量でド迫力体験が楽しめます」ということだろう。「アクションムービーならまだしもスポーツのアニメ映画で大音量はいらないな」と思い、通常上映にした。(観た後は「轟音上映にすればよかった」と後悔したけど)

12時からの回の座席情報を観ると、とんでもなく空いていた。100席ほどあるスクリーンで3席しか埋まっていなかったのだ。100分の3。惜しくもタモリさんのストラップは貰えない数である。(*テレフォンショッキング)

それもそのはずで、公開からかなり経っているし、平日の12時から映画を観れる人種というのはかなり限られている。その3人も自分も選ばれし特別な人間なのだ。いちいちクレジットカードでネット決済するのもめんどくさかったし、その3人もなぜか中央ではなく通路に面した席しか選んでいなかったので、当日映画館でチケットを買うことにした。

 

タッチパネル式の発券機でチケットを購入する。

『THE FIRST SLAM DUNK』 12時の回

順調に手続きは進みいよいよ座席選択の画面。

開始の1時間前になっていたので、昨日の3人から3人程度増えていた。スクリーン中央のちょうど見やすいE列を陣取っている人がいた。自分としては映画は出来るだけ中央で見たいものの、さすがに空いている館内で目の前に人がいるのは少しだけ気が散ってもったいない気がする。

ということもあって、E列の後ろであるF列の中央から少し上手側の座席を選択した。F列には誰もいなかったし、横を気にする必要もない。とりあえず一安心して購入画面へ進もうとした。

 

「その座席はご予約済みです」

 

え?

画面にこう表示された。しかし、座席図のその席は黒く塗りつぶされておらず、選択可能になっていた。少し前にネット予約が入って反映されていないだけかとも思ったが、座席のダブルブッキングになるほどのラグがあるとも思えないのでその線もない。なぜだろう。

その時、一つの可能性が頭を過った。

 

「横の人か?」

 

 

 

タッチパネル式の発券機は4台並んでおり、そのうちの3台は同時に使用されていた。左端と右端が使われていて、自分は左から2番目の発券機。右端を使っていたのは老夫婦でおぼつかない手つきで操作していた。いくら幅広い世代に人気とはいえ老夫婦が昼間から『THE FIRST SLAM DUNK』を観るとは思えない。

となると自分の横にいる女性に絞られた。ロングヘア―で清楚な見た目の女性はほとんど同じタイミングで操作を始めていたので「まさか」とは思っていた。横目で画面を確認する。

 

『THE FIRST SLAM DUNK』 F列 – 〇〇

 

自分が選んだ座席と全く同じ座席だったのだ。これはもちろん単なる偶然である。スクリーン中央の席が取られているため、少し横に外してなるべく視界に他の観客を入れたくないのは誰だって一緒だからである。

しかし、自分は『SLAM DUNK』を観に来ているということもあって、頭がバスケットボールに支配されていた。

 

「スクリーンアウトだ」

 

 

 

リングの下に陣取るために、身体を入れてその場所をキープするバスケットボールにおける大事な技である。『SLAM DUNK』の主人公である桜木花道が、赤木(ゴリ)から教わっていた技で、“リバウンド王”として君臨する一つの要因にもなった。

まさにそれだと思った。

別に映画のスクリーンと絡めて上手いことを言おうとしているわけではないことをどうか分かってほしい。(ちょっと下心はある)

完全に欲しい位置を陣取られた。

その女性はとても綺麗だったが、完璧なスクリーンアウトを決められてしまってからは、山王高校の河田弟に見えた。

 

「座席確保してごめぇん」

 

バスケットボールなら重心を落として対応すればいいが、こと映画の座席に関しては重心を落としても何の意味もない。自信をつけさせてしまった。

ゲームからはじき出された自分は、仕方なくG列の中央を取ることにした。もちろん空いていたので、快適に見れることには変わりはなかったが、同列に人がいて、かつ真後ろに団体が予約していたので完璧な席かと言われるとそうではなかった。

隣の女性は先に座席を選んでいたが支払いに少しもたついていたため、結果的に機械の案内音が綺麗にハモってしまう程同じタイミングで券を購入した。

 

もしこれがスクリーンアウトではなく、本屋で手と手が重なるような運命だったと捉えることができたならどうだっただろうか。

君が好きだと叫びたい

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恐らく「君が好きだ」と叫びたくなっていただろう。