先日、最後の学内ライブがあった。
学内ライブとは自分が所属する大学のお笑いサークルによる月1のライブのことである。例年は1月には開催しないことになっていた。当時は控室が屋外の教室を借りてやっていたので寒すぎてセリフを嚙む人が続出したのと、単純にテスト期間や課題提出期間と被っていたので人が来なかったのが理由だ。なんなら部員も来ない。
けれど、今年度は1年生が多く入ってきて積極的に学内ライブを開いていたので、1月もやることになった。演者の立候補もそれなりに多かった。
自分は4年生だ。必然的に最後の学内ライブとなった。本当は前回(12月)の学内ライブが最後だろうと思ってネタを披露したらあんまりウケなくて心残りがあったので、開催してくれてありがとうと思った。
1月の学内ライブではネタを2本披露することにした。1本は前からやりたかった始めから設定に入ったキャラ漫才。前回やりたかったのだが相方との予定が合わず断念したネタだった。もう1本は分かりやすいコント漫才。相方が設定に入ってボケていくところに自分がツッコむ。一番やりやすいし一番やりたいスタイルのネタだった。
ちなみに、自分は相方を固定していない。「学生お笑いなのでわざわざ固定コンビにしなくても」と思って、毎度毎度やりたい人ととっかえひっかえネタをする“ヤリ漫”(この漫は漫才の漫)と言われていた。今回も1本目と2本目では相方が違う。
当日、朝からバイトがあった。いつも通りスーパーの青果のバイトで、授業が昼からある曜日は朝の7時から3時間だけ入るシフトにしてもらっていた。3時間はあっという間で、9時からバイトに入る人が多いので「皆さんさっき来たばかりなのに、先あがらせてもらいます」と謎の優越感を感じながら大学に向かう。
大学に着いて授業までは時間があったので、一旦部室へ。後輩数名と同期1人。4年生ともなるとこの光景が当たり前、というか4年生で部室に居座っている方が異様な光景である。他の大学のお笑いサークルは3年で引退して、そこから就活に入るので部室に行くことがほとんどなくなるらしい。週3で行っている自分は一体何をしているのだろう?定期的に考えるが、同じようなやつ(非就活組)が2人いるので勝手に安心している。
部室ではこの後の学内ライブについて話をしていた。
「お客さん、来ないですよね~」
という話。
「そんなこと言うなよ」と言いたくなるが、自分も来ないと思っているので何も言わなかった。
3限だけ授業があったのでそれに出席して、授業終わりにまた部室に戻る。ちょうど後輩たちは授業があったので全員外に出て行くタイミングだった。部室に入ると授業のない4年生の同期が1人でポツンと座っていた。そいつはきちんと3年生までで単位をほとんど取り終えて就活をしていたやつなので授業もなく、大学に来るのも久しぶりといった感じだった。4年生が2人きりは気まずいなと思っていたタイミングで部室のドアが開く。ようやく気まずさから解放できると思ったら、同じく部室に入り浸っていた(非就活組)の同期だった。
1年生の頃からサークルの同期として4年間過ごしてきたが、あくまでも“サークルの同期”からは踏み込まない関係性だった。サークルの同期らしく遊びに行くとか飲みに行くとかもなく、部室でおしゃべりするだけ。その関係性が全員ちょうどいいと思っているので、今更変える気はないが、その分集まるとちょっとよそよそしくなる。
とりあえずその場では1月末にある追いコン(追い出しコンパ)の企画の話になった。もうすぐに迫っているのにもかかわらず「ポケモンのネタを披露する」しか決まっていない。もっと追い出してくれよ。話をしていたら、自分の知らないところで「体育館を借りてバスケットボールをする」が追加されていたらしい。お笑いサークルでバスケ経験者が1人しかいないのにやるというのだ。頼むから何かに纏わってくれ。
そのバスケットボールの話の流れで、『THE FIRST SLAM DUNK』の話題になった。3人とも観ていたのでめちゃくちゃ盛り上がった。「あのシーンがかっこよかった」「あれで泣いた」と話をしている中、映画には全然登場しない「植草」がどんな顔でどんなやつだったかを思い出す時間があった。
「バスケットをよく知っているポイントガード」
このセリフだけで何となく思い出せた。宮城のような派手さが無さ過ぎて顔は全くピンとこなかった。
ちなみにチケットでスクリーンアウトされた話をしたら結構ウケた。ラッキー。
過去記事
そうこうしているうちに、ぞろぞろと部員たちが集まってくる。よく部室に来る主要メンバーばかりだが、今回の学内ライブに出る演者はほとんどいなかった。前日になって2日開催を1日にしたり、体調不良やらなんやらでドタキャンもあったので、ごっそり減っていたのだ。部室がわいわいがやがやし始めたので、相方(1本目)ともう一つの部室でネタ合わせをしに行く。
月曜日に1度部員の前でネタ見せをしているのでセリフは行けるだろうと思ったら、全然出てこなかった。それに加えてやはり寒さで口が回らなくなっていた。「ら行」は巻きすぎるし、「わ行」は口のスペースが広すぎる気がした。やばいやばいと言いながらも5回程度で切り上げた。結局、2本目の相方は別の固定コンビの方のネタ合わせに言っていたので、本番前ギリギリにネタ合わせをすることとなる。
5限が終わり、部室にいた部員がぞろぞろと会場となる教室へ向かう。高座替わりのビールケースや音響のBluetoothスピーカーなど、ライブに必要な道具を持って設営に当たる。その頃には相方(2本目)が来ていたのでネタ合わせをする。こっちはコント漫才でボケさえ順序よくいけたら詰まることはないので、比較的スムーズに出来た。
いよいよ本番。お客さんは7人。
「意外と来てくれた」と思った。1年生の頃、必死に昼休みビラ配りをしてもお客さんが2,3人という時代を知っているから、全然嬉しさの方が勝っていた。
落語を後輩が披露し、その次が漫才出番だった。「最後の学内ライブはウケたいな」と思って舞台に出ようとしたら、数少ないお客さんが帰っていくのが見えた。後から聞けば、前の出番の落語をしていた後輩の知り合いだったらしく、その出番が終わったので帰ってしまったのだ。しかも3人ごっそり。“3”という数字に“ごっそり”なんて擬音を付ける日が来るなんて思っても見なかった。結局、お客さんは半分に。
「それでも来てくれる人にはウケたい」と気持ちを切り替えていざ出番。それなりにウケた。部員がサクラとして観客を増量してくれたおかげだ。本当のお客が“3”に対して偽物のお客が“15”くらい。Qooぐらいの割合でかさましている。
2本目は途中相方がセリフを言い間違えたところがあったが、一番ウケたいところでウケたのでよかった。相方は舞台が久しぶりすぎて、ずっと初期微動状態だった。そのせいでこっちもネタが飛びかけたが、何とかこらえてフィニッシュ。
最後の学内ライブはいい思い出となった。
気付けば4年生になっていた。
コロナがあったことで2年ほど空白の期間があったりで満足にサークル活動は出来なかったが、それでもいろんな経験をさせてもらった。
「最後の○○」となることが多い。
最後の授業、最後の通学、最後の部室、最後のサークル
「最後の」が終わる度に寂しくなるが、気持ちを切り替えていかなければとも思う。
もう思い出になってしまうものだから、それはそれとして今を生きていきたい。
そして、一刻も早く最後のコーナー企画の大喜利でスベったことを思い出にして消し去りたいと思う。