昨年の12月頭ごろ、なんで思い立ったのか分からないが、急に懸賞に応募したくなった日があった。応募したのは大学の授業中だったのであまりつまらなかったのだろう。それに、卒業まであと少しとなった段階で「少しでも無料で生活の糧に」と思ったのかもしれない。たった1日だけそんな日があった。
その日は怒涛の個人情報入力ラッシュだった。
懸賞サイトを開き、片っ端から応募できそうなページに飛んで個人情報を入力していく。
氏名、年齢、住所、電話番号、メールアドレス。
何個か応募していくと“応募者に優しい懸賞サイト”と“応募者に優しくない懸賞サイト”の違いが分かってくる。
一番嬉しいのは、『郵便番号を打ち込んだだけで住所まで勝手に入力してくれるやつ』
これが本当にありがたい。あとは番地さえ打ち込めば完成の状態まで持っていってくれるので、さながらチンするだけの冷凍食品のようである。食器を洗う必要もない容器ごとチンできるパスタぐらい感謝している。
逆に厄介なのは『クイズを出して試してくるやつ』
『勝手にメール配信登録される』ぐらいなら甘んじて受け入れるのだが、応募する前までに手順を踏まなければならないのがめんどくさい。特に食品系はこの手のクイズが多い。商品情報のページに飛ばせて、そこから得た情報を基にクイズに正解しなければ応募できない。それきっかけで商品に興味を持つこともあるかもしれないが、懸賞に応募する時点で『無料で何かを手に入れたい』という強欲の持ち主(偏見)なので、「そんなんいい!」と思っちゃう。農協のページは青果でアルバイトをしている関係上、ちょっと勉強になった。
その日から1か月が経った1月のある日。
珍しく郵便物を受け取った母親が「なんか当たってんで」と封筒を寄こしてきた。何かしらの懸賞が当たったのだ。封筒を受け取り、中を確認する。そこにはAmazonギフトカード500円分が入っていたのだ。
「よっしゃー―――」
500円分ではあるが、あの日の個人情報入力ラッシュが身を結んだと思えば嬉しいことだった。このギフトカードはありがたく使わせていただくとして、何の懸賞で当たったのかが気になった。応募した日も手当たり次第にいろんな企業の懸賞に応募したので、正直どこの商品が何とかは一つも覚えてなかったのだ。封筒の中に紙が1枚入っていたので確認する。
「この度は○○にご応募いただき…」
車関係の企業だった。新しくサービスを始めたので、それに対する市場調査的なアンケートでの懸賞だったらしい。
「免許持ってなくてごめん」
なんとなくそう思った。自分は免許を一つも持っていない。普通免許すらもっていない人間なのだ。別に行きたい場所が無いし、事故を起こして人生を台無しにする可能性があるし、何より自転車ですらたまに人にぶつかりそうになるほどのぼんやり人間が車なんてものを運転していい訳が無いと思っている。取る前に返納しているような感覚だ。さや香の漫才より早い(22歳)。
そんな無免許人間が、無料で商品券欲しさに車関係のアンケートに答えてまんまと500円分の価値を手に入れたと思ったら、急に罪悪感を感じ始めた。
対象には興味ないのに欲を満たすために身近なアンケートに手を出してしまう。
ワンナイトの関係と一緒だ。
自分はワンナイト懸賞をしてしまったのだ。
あの日から、懸賞は全くやっていない。熱しやすく冷めやすい性格なので、懸賞とはワンナイトの関係で終わらせてしまったまんまだ。この罪悪感から逃れるためには、一途に愛せる仕事を探す(きちんと労働で対価を稼ぐ)か、他の懸賞を抱きまくって誤魔化すかのどちらかしかない。
どちらかしかないことはないのかも。
浮気上等!
アグレッシブに生きていきます。