書書鹿鹿 ~かくかくしかじか~

"かくかくしかじか"と読みます。見たもの、聞いたもの、感じたことを書いてます。

バウムクーヘン×4=?

「何で?」と思った話

 

先日、久しぶりにサークルで一緒だった後輩と会った。

自分のサークルで4回生を引退させる追いコン(追い出しコンパの略)が開催され、昼間の催し物には参加できなかったが、打ち上げの飲み会には参加していた。

その後輩は自分が4回生になり卒業するよりも早く大学を辞めてしまった。芸術系の大学なので、中退は比較的多い。金銭的な問題や、思ってたのと違う問題、別に学ばなくても自分でできる問題と辞める理由はいくつもある。その後輩は辞める理由がありすぎた。自分が4回生、後輩が3回生になった夏ごろ、一足先に大学を辞めていったのだ。

 

 

 

その後輩とはよく相方を組んでお笑いライブに出ていた。演劇をずっとやっていたこともあって声は出るし演技力はあるし舞台度胸もある。自分に無いものをすべて持っていた。自分の書いたネタを理解するのも早かったし、実行できるのも強みだった。学内だけでなく、外部のライブに出る時も必ずと言っていいほどその後輩を誘った。別にそれ以外でご飯に誘うとか遊びに行くとかは無かったが、2年ぐらいよく一緒にいたのでかなり深い関係ではあったと勝手に思っている。

 

 

 

打ち上げに来て、自分は別テーブルに座った。一応4回生で主役なので各々ばらけた結果だった。2時間制の居酒屋で同じテーブルの別の後輩たちと楽しくおしゃべりしていたが、せっかく久しぶりに会ったので話したくなりテーブルを移動した。

移動した先は一通り盛り上がった後の果てみたいなテーブルで、そこに居たメンバーは別のテーブルにばらけていたため同期の4回生の部員1人とレモンサワー1杯で酔いつぶれ抹茶アイスをおばあちゃん級の猫背で食べていた後輩と久しぶりに会う後輩の3人だけだった。

「久しぶり」

「お久しぶりです」

みたいな会話があって、近況報告を話し合った。SNSで何をしているのかはある程度知っていたが、実情はなかなか大変そうだった。今までお世話になっていたし、大学も辞めてアルバイトで生計を立てながら創作活動をしていたので、何かあげたくなった。前から何かあげようと思っていたのだが、物よりも実用的なギフトカードとかの方がいい気がして、「ギフトカードあげるわ」と言ったら、「いや、いいですよ。お世話になりましたし」と言われた。こっちがお世話になっていたのに。

 

逆に、後輩が何かを思い出したようにカバンの中を探し始めた。

「4回生の皆さんが卒業されるということで私からのプレゼントです」

そう言って、隣に座っていた自分の同期にバウムクーヘンをプレゼントしていた。1口サイズのバウムクーヘン4個と何とも中途半端だったが、きちんとプレゼントを用意してくるあたり偉いなと思った。

「ほりいさんにもありますよ」

そう言われたが、自分は断った。

「バウムクーヘン食べられへんから」

 

 

 

自分は生まれつき食物アレルギーを持っている。人からお土産やプレゼントを貰うことは今までの人生の中でそれなりに多かったが、食品に関しては難しいものがあった。

アレルギーについて理解ある友人が個人で渡してくれる分にはきちんと選んでくれているので問題ないが、アレルギーのことを知らない人や不特定多数に向けたプレゼントを渡すときは食べれないことがほとんど。

 

 

 

バウムクーヘンなんかは自分の卵アレルギーど真ん中に刺さる食べ物だ。申し訳ないが遠慮することにしようと断りを入れたら、後輩が

「その辺はわかってます。任せてください」

と言って、バウムクーヘンよりももっとカバンの奥の方をゴソゴソと探し始めた。

「すまん」と正直に思った。2年間一緒にいて、ご飯も食べに行ったこともあるし、帰り道やコロナ期間はzoomでいっぱい喋った仲である。きちんと配慮してくれていたのだ。

「ありました。ほりいさんにはこれです」

 

「ありがとう」と言って受け取った。

 

『発芽米ごはん』

レトルトご飯1パックだった。

「何で?」

決して卒業していく先輩ににあげるものランキング上位ではないし、「アレルギーに配慮した」点を考慮してももちろん圏外だ。手渡しのレトルトご飯1パックは初体験すぎる。かと言って丁寧にラッピングされたレトルトご飯1パックだとしても初体験だろうし、絶対に笑うと思う。意味が分からな過ぎて。店員もお願いされた時困惑するに違いない。

 

 

 

「あ、ありがとう。何で?」

率直に聞いてみた。

 

「まぁ…」

なんか誤魔化された。

 

【バウムクーヘン×4=レトルトご飯×1】

の方程式は理解できないが、後輩からプレゼントをもらえて嬉しかった。食べ盛りの20代にはありがたいプレゼントである。

こんなにも食べるタイミングの難しいプレゼントはなかなかないかもしれない。