昨日書いた記事の続き。
昼過ぎに富田林にある喫茶室『マメトコナ』でお茶をした後、時間もあったのでサンダル後輩と1駅歩いた。よく通った道だが3月で大学を卒業するため、もう来なくなるんだと思えば少しノスタルジックな気持ちになった。看板に描かれていた小学生が描いた田んぼのイラストを見て、「『刈れるもんなら刈ってみろよ』という態度の稲もいるかもしれない」と話したらドン引きされた。相変わらずキモイ先輩だ。
駅に着く。サンダル後輩は次の日実家に帰る予定があり、それの荷造りがあるので駅で解散することになった。帰りの新幹線もサンダルで帰るらしい。冬を知らない可能性が出てきた。今度会ったら広瀬香美を聴かせてみようと思う。
この時点で夕方の5時。晩ご飯を外で食べるには中途半端な時間だし、ついさっき『マメトコナ』で「米粉と豆腐のラムチョコレートケーキ」を食べたばかりなので、お腹に余裕があるとも思えない。悩んでいた時、あるお店を思い出した。
『喜多方ラーメン坂内』である。
昨年の12月ごろ、自分は無性に食に飢えていた。それは“お腹が減っている”という意味ではなく、“食べれるものの幅を広げたい”という意味である。生まれつき小麦・卵・乳成分に対する食物アレルギーを持っているので、食事の幅はずっと狭かった。徐々に小麦は改善されうどんやそばといった麺類を外で食べれるようにもなったが、卵・乳成分の壁は高く、あらゆるジャンルで制限を受けてきた。しかし、昨年の春ごろからチャレンジ精神で自分が食べられるジャンルを開拓していき始める。(*自分はある程度軽度なので、他の方はマネしないように)てんぷらやとんかつあたりも大丈夫なことが分かり、食に対する感動と興味が一気に押し寄せた。その中でも攻めたかったジャンルがラーメンだ。
インスタントラーメンは食べたことがあるが、外食ではほとんどない。以前書いたぎょうざの満州同様、アレルギー表を掲載していて、なおかつ卵・乳製品不使用のお店をひたすらインターネットで調べていた。そこで見つかったのが『喜多方ラーメン坂内』である。
大阪には2店舗しかなく、なかなか行く機会がないと思っていたのだが、富田林から大阪阿部野橋に向かう途中の針中野に1店あるのを知っていた。せっかくの機会なので、1人でラーメンを食べに行くことにした。
普通電車しか停まらない駅だが、長居公園へのアクセスがしやすいため駅前は比較的発展していた。アーケードがあり飲食店も多く、キャッチの兄ちゃんも駅前にいるほどだった。駅の改札を出て階段を降りるとすぐ『喜多方ラーメン坂内』があった。この時点で午後6時。食べきれるかどうかの不安を抱えながらも、店内へ入っていく。
店内はカウンター4席、テーブル3席程度だったが2階もあるらしい。ど平日の夕方にしてはそれなりに混んでいた。1人でカウンター席へ座りメニューを見る。事前に調べていたので注文は決まっていたが、食べれるラーメンがこんなにもあると思うと嬉しくなるので少しの間メニュー表を見ていた。
店員さんを呼んで注文する。
自分が頼んだのは一番王道の「喜多方ラーメン」と丼ものの「ねぎ塩炙り焼豚ご飯」だ。セットメニューで少し安くできたが、丼ものがミニになってしまうのでやめた。せっかく食べれるなら堪能したいのだ。
ラーメンが届くのを待っていると、店内放送で『喜多方ラーメン坂内』のテーマソングが流れてきた。そこで初めて『坂内』が「さかうち」ではなく「ばんない」と読むことを知る。
「♪溢れる笑顔 坂内 溢れるラーメン 小法師」
「♪坂内&小法師」
これが頭から離れない。喜多方ラーメンは福島県のご当地ラーメンで起き上がり小法師も福島県の名産品ということは知っていたが、なぜにここまで「小法師」を推しているのかが分からなかった。後日、Googleで「小法師」と検索したら、トップに『喜多方ラーメン坂内』のホームページが表示された。ちゃんと共通認識として認知されていた。「小法師」を独占しているらしい。
「溢れるラーメン」
溢れちゃダメだろ。
店内に流れるテーマソングをしばらく聴きながら待っていると、ようやく料理が提供された。
派手な色味はないものの、茶色いスープの上に乗った5枚のチャーシューがインパクトを与える。
「いただきます」
喜多方ラーメンならではの太麺の食感と厚めのチャーシューのジューシーさが、今までに自分が食べたことのないラーメンで美味しかった。自分は細い麺の方が好みなのだが、これはこれでアリだなと思った。知見が広がった瞬間である。
ただ、正直ラーメンよりも出会えてよかったと思えたのが、「ねぎ塩炙り焼豚ご飯」だ。『喜多方ラーメン坂内』はチャーシューに力を入れているだけあって、焼豚の甘みが凄かったのと、炙ったことでよりそれを引き立たせる香りが立っていて、その上ネギ塩の辛みがご飯と焼豚と合いまくっていた。ちょっと前にケーキを食べていたことすら忘れさせるぐらい、がっついてしまいあっという間に完食。丼ものは他にも「炙り焼豚ご飯」「わさび醤油の焼豚ご飯」があるので、それだけを食べに行きたいくらいだ。「ねぎ塩炙り焼豚ご飯」に感動してしまった。
本当にお金をケチってミニにしなくてよかったなと思う。ラーメン目当てに来たのに、意外とサイドメニューにときめいてしまうのは、実際に店舗に訪れて食事を楽しんだ自分だけの特典だ。食の探求心はどんどん増すばかりだし、この年になって新たな出会いがある時だけアレルギーでよかったと少しは思える。
「♪坂内&小法師」
これが耳に残って掻き出せない。ふとした瞬間にまた『喜多方ラーメン坂内』に行きたくなるだろう。