ヨーロッパ企画『建てましにつぐ建てましポルカ』
https://www.europe-kikaku.com/polca/fukuoka.html より引用
京都が誇る劇団・ヨーロッパ企画による第32回公演『建てましにつぐ建てましポルカ』を観た。DVDを買わなければなかなか観ることが出来ない演劇をU-NEXTで観られるのは本当に助かる。観るハードルもグンと下がって腰が重い自分でも気軽に観ることが出来る。
U-NEXTで配信されている数あるヨーロッパ企画の公演の中で『建てましにつぐ建てましポルカ』を選んだのは、「一番くだらなさそうだったから」である。
迷路に入った貴族が、現れた人物に翻弄され、混迷は一層エスカレート。後半は、多くの人物が登場してさえわたるドタバタを繰り広げ、ヨーロッパ企画の真骨頂を楽しめる。
中世ヨーロッパの王宮の乞食がよく通る抜け出し方が分からない場所を舞台にした複雑なワンシチュエーションコメディ。見どころからごちゃごちゃした様が伝わってくる。「くだらない」のはもちろんいい意味で、「何も考えずに笑えそう」と思ったのだ。
その予想は大正解。
始めは冷静に落ち着いて解決策を見出そうとしているのだが、パーティが進むことに焦りを覚えて何とかして会場に戻ろうとする。貴族としてのプライドのせいでいろんな制限を受けてしまうが、次第に手段を選ばなくなってくる。
見どころにも書いてあったように、終盤になると問題を抱えた登場人物たちで舞台上は賑やかになって、あらゆるところで“それどころではない問題”が起きていく。
ヨーロッパ企画の舞台を何作か観ていて、壮大なSFで話しを広げて最後は無理やり回収するイメージがあったのだが、今作はいい意味で裏切ってくれた。
散らかしっぱなしも散らかしっぱなし。何一つ解決しないのに、次々に設定を追加していく。世の親が見たら「片づけなさい!」と怒りたくなるだろう。
舞台のいたるところで登場人物たちが問題を起こし、とっちらかす様は自分の好きな劇団であるシベリア少女鉄道っぽさがあって大好きな作品だった。
舞台上で起こる複雑な悲劇を、観客は複雑なことを何も考えずに喜劇として楽しめる。
コメディはこうでなくっちゃと思わされた。
【基本情報】
『建てましにつぐ建てましポルカ』
劇団名:ヨーロッパ企画
2013年上演
ストーリー
中世、東欧。
王権のかつての威光は翳り、諸侯が跋扈する混迷の時代。
城では絶えずそこかしこで、建てましにつぐ建てましがなされている。そんな城で、パーティに戻る道すがら、迷ってしまった貴族と従者。
歩けども歩けども、元の道には戻れず、見慣れぬ回廊が続くばかり。高みの見物の新興貴族、足手まといな辺境伯。
不案内なメイドに、不遜な物乞い、通りすがる道化。
はては城の秘密や、世界の危機までもが、壁のむこうに見え隠れ。ヨーロッパ企画が放つ、迷路コメディ。
諸君、今こそ迷路狂時代である!