書書鹿鹿 ~かくかくしかじか~

"かくかくしかじか"と読みます。見たもの、聞いたもの、感じたことを書いてます。

ディベート最弱王

「今日は絶対に何もしないぞ!!」

3連休の中日に、生まれてから幾度となく繰り返してきた不毛な意気込みを決め、朝からダラダラと過ごしていた。昔入れていたゲームアプリを蘇らせ、「こんな感じか」と思い出せばまたアンインストールで先行き不透明なコールドスリープにつく。そんなことを昼前に起きてからずっとしていた。

夕方ごろ、小中時代の友人から電話がかかってきた。

この友人は以前、人生初のパチンコに連れ出した男で、自分に似たどうしようもないやつである。

自分がフリーターで時間に余裕があるのを知っているため、定期的に電話がかかってパチンコに誘ってくる。

これがあまりにも楽しくないのでここしばらくは電話を無視していたのだが、さすがにその日は何もしていなさすぎたので電話に出ることにした。

 

「麻雀しようぜ」

 

開口一番これである。『イナズマイレブン』の円堂守かと思った。

どうやら暇すぎるので、4人集めて麻雀がしたくなったのだという。

 

 

「メンバーは誰?」

「俺と俺の大学時代の友人2人とほりい」

「やめとくわ」

 

もちろん断った。

“友人の友人”なんてものはこの世で最も話しにくい人種である。共通の話題が「友人」しかないためお互いそれにもたれかかって、尽きれば微妙に空いている距離感だけが浮き彫りになる。

そんな難しい関係性の人物が×2となると、マイノリティは居心地が悪すぎる。

 

「え?大学時代の友だちにほりい連れて行こうとしてんの?それはよくないよ」

 

電話口から急に声がした。友人の弟だ。

 

 

「そんなん気まずいに決まってるやん」

 

正論である。弟の方が常識をわきまえていた。しかし、これまで何度断っても無視しても依然誘ってくる友人である、全く引こうとしない。

 

「でも、フリーターで今日は仕事なくて1日何もやってないし、家からも近いから移動も楽。麻雀やるだけだから最悪喋らなくても間は持つ。どう?」

「じゃあ行った方がいいな」

 

俺より先に友人の弟が折れてしまった。さっきまで正論を武器に2対1で戦っていたのが、気づけば敵側に鞍替えしていたのだ。どこからどう見ても他人事なのでしょうがないが。

 

「弟もそう言ってるし行くしかないな」

 

誰を引き合いに出してるのかは意味が分からないが、その日何もしていないという罪悪感も向こう側に加勢したため断る切り札が無くなってしまった。

 

「行くわ」

 

そうして、白紙だったスケジュール帳に「知らない人の家で麻雀をする」が書かれたのである。

俺はとにかくディベートが弱い。